脳神経外科
脳神経外科とは
脳神経外科では、脳・脊髄・末梢神経系および、その付属器官(血管、骨、筋肉など)を含めた神経系全般の疾患の中で主に外科的治療の対象となりうる疾患(脳卒中などの脳血管障害)について診断、治療を行います。「脳神経外科」と聞くと、その特別なイメージから、やや受診しづらく思われるかも知れませんが、どうぞお気軽にご相談ください。
疑わしい症状が出たら早めに診察を
脳の疾患は、治療に緊急を要することが多いので、頭部を強打あるいは外傷を負ったときはもちろん、めまいや震えが止まらないなど、少しでも疑わしい症状が現れたら、早めに受診することをお勧めいたします。診察には、マルチチャンネル・ヘリカルCTをはじめ、高精度の検査機器を用いることによって脳神経系疾患の早期発見、早期診断に努めています。当科については、高円寺周辺はもちろん、杉並区や中野区の全域およびその周辺からも患者様が通院されています。
こんな時はご相談ください
- 頭が痛い、重い
- 頭を打った
- 頭をけがした
- 脳震盪を起こした
- めまい、ふらつきがする
- 吐き気がする
- 手足が震える、痺れる
- 呂律が回らない
- 言葉が出てこない
- もの忘れがひどい
- 顔が痙攣する
- 耳鳴りが止まらない など
脳神経外科の主な対象疾患
- 脳腫瘍(神経膠腫(グリオーマ)
- 胚細胞腫(ジャーミノーマなど)
- 髄膜種(メニンジオーマ)
- 頭蓋咽頭腫(クラニオファリンジオーマ)
- 神経鞘腫
- 下垂体腫瘍
- 神経膠芽腫
- 転移性脳腫瘍
- 悪性リンパ腫など)
- 脳血管障害(くも膜下出血、高血圧性脳内出血脳梗塞、一過性脳虚血発作、頸部動脈の動脈硬化性病変、狭窄病変、脳血管内治療、もやもや病など)
- 機能的脳神経外科疾患(パーキンソン病、三又神経痛、片側顔面けいれんなど)
- 頭部外傷(急性硬膜下血種、急性硬膜外血種、慢性硬膜下血種など)
- その他(水頭症、小児神経疾患、髄膜炎、脳炎、頭皮・頭蓋骨腫瘤など)
当院では、脳神経外科の手術は行いません。手術が必要な場合は、適切な病院へご紹介しています。「てんかん」および「症候性てんかん」の治療も行っています。
脳神経外科で扱う主な疾患
脳卒中
脳卒中は脳血管障害とも言い、脳の血管が破れたり詰まったりして、その発症部位の機能が失われてしまう病態です。
脳卒中は大きく分けると「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」の3種類に分けられます。
脳梗塞は血管が詰まって、その先の脳細胞が壊死するなどの障害を受ける疾患、脳出血は脳の細かい血管が破れて脳の中で出血する疾患、くも膜下出血は血管のこぶ(動脈瘤)が破れ、くも膜下腔(脳を覆っている3層の髄膜のうち、2層目のくも膜と3層目の軟膜の間の空間)に出血をきたす疾患です。
脳梗塞
脳梗塞は、脳の血管が細くなったり血のかたまりが詰まったりして、その先に血液が届かなくなって酸素が送られなくなるために脳細胞が壊死するなど、障害を受ける疾患です。詰まった場所によってそれぞれに知覚障害や運動障害、意識障害など、多様な症状が現れてきます。
脳梗塞は、詰まる血管の太さや詰まり方によって3つのタイプに分けられます。
太い血管から枝分かれした細い血管が狭くなって詰まるタイプが「ラクナ梗塞」で、高血圧が主な原因です。動脈硬化で狭くなった太い血管に血栓が生じ、血管が詰まるタイプが「アテローム血栓性脳梗塞」で、高血圧や脂質異常症(高脂血症)、糖尿病などの生活習慣病が主な原因になります。心臓にできた血のかたまりが血流に乗って脳まで運ばれ、脳の太い血管を詰まらせるタイプが「心原性脳塞栓症」で、心房細動(不整脈の一種)が原因となることが多いようです。
脳出血
動脈硬化によって脆くなっている脳の血管に、高血圧による強い圧力がかかり続けていると、ついには破れて脳の中で出血を起こすことがあります。
脳から出血した血液は固まって血腫になり、この血腫が大きくなると、脳の内部の圧力(脳圧)が高くなったり、血腫が周囲の正常な脳細胞を圧迫したりします。こうしたことによる脳細胞のダメージにより、麻痺や感覚障害などの後遺症を招くことが多く、重症例ですと意識障害、最悪の場合には命にかかわることもあります。
くも膜下出血
頭蓋骨の下には、くも膜という蜘蛛の巣のように張り巡らされた透明な薄い膜があり、その内側に脳があります。脳に血液を送る血管は、くも膜の下を走っています。この血管にこぶ(動脈瘤)や動脈硬化が生じると、血圧が高くなった時に急に破裂することがあります。出血した血液は、くも膜と脳のすき間にどんどんと広がっていきます。この病態が、くも膜下出血です。
何の前触れもなく突然激しい頭痛、吐き気、嘔吐が起こり、そのまま意識を失うことが多い疾患です。出血が少なければ意識は回復しますが、出血量が多い場合や、脳内に血液が流れ込んだような場合には、死に至るケース(約半数が命にかかわり、社会復帰できるのは3人に1人くらいの割合と言われます)もあります。一度出血した動脈瘤は、短時間のうちに再出血することが少なくないため、入院による絶対安静が必要です。
経験したことの無いような強い頭痛に襲われたら、ためらうことなく早急に救急車を呼んでください。
脳動脈瘤
脳の動脈のどこかが、こぶ状に膨らんだ状態を脳動脈瘤と言います。
この動脈瘤は通常、血管の枝分かれした部分が、血流に圧されているうちに風船のように膨らんできて形づくられます(分岐部ではない部分に生じることもあります)。そして、破裂しないままの状態にあるこぶを「未破裂脳動脈瘤」と呼びます(近年、脳ドックなどで、破れる前にこの未破裂脳動脈瘤が発見されるケースが増えています)。この未破裂脳動脈瘤が破裂して起こるのが、くも膜下出血です。くも膜下出血を予防するには、破れる前にこぶを発見し、治療を施して破裂を防ぐことです。この治療には、頭蓋骨を開けて動脈瘤をクリップで塞ぐ「開頭クリッピング術」や、極細の管(マイクロカテーテル)を用いて動脈瘤の内側にコイルを詰め、閉塞してしまう「コイル塞栓術」などがあります。脳動脈瘤を閉塞させる薬は、現在のところ存在しません。
頭部外傷
頭部外傷は、主に頭をぶつけてできるけがのことを言います。頭部外傷は、皮下血腫(いわゆる「たんこぶ」)や皮膚の切り傷、頭蓋骨の骨折、脳のけが(脳挫傷やくも膜下出血など)――の大きく3種類に分けられます。軽い頭部外傷では痛みが走るだけで、特に治療の必要性はありませんが、下記のような症状を伴うような場合は、速やかに脳神経外科をご受診ください。
- 吐き気がし、嘔吐を繰り返す
- 頭痛がどんどんひどくなる
- 意識が朦朧としている
- 手足が動きにくい
- 物が見えにくい
- けいれんを起こす
- 出血がひどい
- たんこぶが良くならない
- 耳や鼻から、血液混じりの水が出た など
脳腫瘍
当院では診察のみで疑わしい患者様は、適切な病院へ紹介します。
脳と脳を取り巻く組織に生じる腫瘍を総称して脳腫瘍と言います。脳腫瘍の患者数は10万人に12人程度と推測されています(転移性脳腫瘍を除く)。乳幼児から高齢者まで、あらゆる世代にみられるのが特徴です。CTやMRIによる検査を行えば、ほとんどの脳腫瘍の診断が可能です。専門医が診れば、腫瘍の部位はもちろん、多くはその腫瘍の種類までわかります。
脳腫瘍にはいろいろな種類がありますが、最も多くみられるのは神経膠腫(グリオーマ)で、原発性脳腫瘍の約30%を占めます。一般に、この腫瘍は周囲の脳にしみ込むように広がっていきます(浸潤)。そのため、正常な脳組織との境界が不鮮明で、手術で全てを取り除くことは困難です。そのため、通常は再発を予防するために、術後放射線療法や化学療法などが行われます。脳腫瘍の主な症状(慢性的な頭痛、吐き気や嘔吐、視力低下など)が見られたら、早めに専門医療機関で検査してもらうことが大切です。早期に発見できれば、それだけ治療もしやすくなりますし、治療を受けて完治すれば、普通の生活に戻れます。
顔面けいれん
顔面けいれん(片側顔面けいれん)とは、顔の半分が自分の意思とは関係なくけいれんを起こす疾患で、通常は目の周囲から始まり、次第に口元へと広がっていきます。最初のうちは、まぶたがピクピクする程度ですが、やがてはあごの下の筋肉もけいれんするようになります。頻度にしても、最初は緊張した時だけに起こりますが、だんだんと時間が長くなっていきます。やがて一日中、時には就寝中も起こるようになったりします。
原因は、脳の深部において血管が顔面神経に接触して圧迫することです。
病気自体は命にかかわるものではなく、放置しても特に差し支えは無いのですが、ご本人様が症状に困っているような場合には、治療を考えることになります。
顔面神経麻痺
顔面神経麻痺とは、顔面神経に支配されている顔面筋が運動麻痺を起こした状態を言います。原因疾患が明らかな症候性顔面神経麻痺と、原因がはっきりしない特発性顔面神経麻痺(ベル麻痺)とに分けられます。
原因疾患として多いのは、ヘルペスウイルス感染症です。口唇ヘルペスを以前患った方が、突然、顔面神経麻痺を起こすのが典型的な発症パターンです。ほかには腫瘍や代謝疾患が原因となる場合もあります。
いずれにしましても、顔面神経は顔面神経管と呼ばれる狭いトンネルを通って脳から外に出ますが、何らかの原因で顔面神経が腫れて管の中で圧迫され、これによって麻痺が生じると考えられています。
髄膜炎
当院では診察のみで疑わしい患者様は、適切な病院へ紹介します。
髄膜炎は、髄膜という脳や脊髄を保護している膜の部分が、細菌やウイルスの感染により炎症を起こした状態です。首筋が硬直したり、後頭部が痛んだりするなどの症状が現れます。意識障害やけいれんが生じることもあります。嘔吐、高熱といった強い頭痛を伴う「細菌性髄膜炎」を発症すると、命にかかわるケースもあり、要注意です。迅速な診断と適切な治療を早急に開始することが大切です。
脳脊髄液漏出症
脳脊髄液漏出症は、当院では診察のみで疑わしい患者様は、適切な病院へ紹介します。
脳脊髄液漏出症とは、交通事故やスポーツ外傷、転倒など、何らかの理由で髄液(脳室やくも膜下腔を満たしている無色透明の体液)を包む硬膜に傷が入り、髄液が漏れ続けることによって脳脊髄液が減少をきたし、頭痛をはじめとする様々な症状が現れる疾患です。脳脊髄液漏出症に特有の症状には、起立性頭痛(起立すると生じる頭痛)がありますが、必ずしもすべての患者様に現れるわけではありません。その他、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛などの頭痛、疼痛、全身倦怠感、めまい、吐き気、睡眠障害などがみられることがあります。脳脊髄液減少症には、臥床安静と水分補給による保存療法、ブラッドパッチ(髄液が漏出している部分を、患者様自身の血液を使い、その凝固する性質を利用して塞ぐ方法)などの治療法があります。